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【ご報告】

企画展関連イベント「柳田邦男『魂の歌声に耳をすまして』」

2021年8月28日、「いせひでこ絵本原画展~聞こえた「さよなら」の声」(2021.7.9金~10.5火)の関連イベントとして、柳田邦男講演会『魂の歌声に耳をすまして』を開催しました。 写真  現在、原画を展示中の『けんちゃんのもみの木』は、日航ジャンボ機御巣鷹山墜落事で当時9才の次男を亡くした美谷島邦子と、共に御巣鷹山に登り続けた画家・絵本作家いせひでこが創った絵本です。
 日航機墜落事故の発生当時から事故原因を取材、遺族に寄り添い続け、現在も日本航空安全アドバイザリーグループの座長を務める柳田邦男が、「魂の歌声に耳をすまして~さようならなき別れを考える」のテーマで講演しました。

 講演では、日航ジャンボ機御巣鷹山墜落事から『けんちゃんのもみの木』ができるまでの美谷島さんをはじめご遺族の状況、航空会社側の変化などを紹介。『けんちゃんのもみの木』が美谷島さんの「35年後の心の遍歴の結晶」であるとして、内容をポイントをおさえながら紹介しました。

 その上で、コロナ死や災害での死、津波による行方不明など「さようならのない別れ」には重い意味があるとして、ボーリン・ボス博士の「あいまいな喪失」の理論をあげました。
そして、日本人の「さようなら」という言葉の発生から使われ方をたどり<さようであるならば><そうでなければならないならば>の2つの意味を提示し、自身の父親と次男の死を体験した際の受容がどうであったかを話されました。

 最後には「『さよなら』を抹殺する最悪の不条理は戦争である」として広島の被爆作家・原民喜や俳人・金子兜太の書籍を紹介した後、御巣鷹山での活動の近況を伝え、「死を考えることは生を考えることである」、「この危機の時代に1人ひとりのしっかりとしたLiving Willの重要性」を訴え講演会を締めました。

 講演会を終え、その内容に感動した当館館長は以下のように柳田邦男さんといせひでこさんにお手紙を送っています。

「拝啓 柳田先生、ひで様」___館長 酒井倫子(2021.8.29)

 “魂の歌声に耳をすませて さようならなき別れを考える”は歴史に残るご講演になったと思います。2時間を超えるお話でしがた、先生は少しもお疲れをお見せにならず、本当に素晴らしいものでした。
 毎年、どんな時も柳田先生が御巣鷹山をめざして登られるお姿を私どもは見させていただいて参りました。
御自分の御身体のよしあしよりも、多くの生命をうばった、あってはならない事故を追い続けてこられた先生の、ひとつの集大成のような名御講演であったと感じました。
私は先生のお話を出来る限り聞きもらすまいとメモを取り続けながら、生命を守る活動を、御自身の生命にかえてもなし続けてこられた柳田先生のすごさを想い胸いっぱいになりました。
 ひで様と美谷島さんとの出会い、そして深いきずなの中で生まれた『けんちゃんのもみの木』!!この作品を中心に今夏“いせひでこ絵本原画展~聞こえた「さよなら」の声”が28年目の森のおうちに展開できたことは、昨日の先生の御講演と共に神様からのプレゼントです。
お三人は無事にお着きになられたでしょうか。
お疲れの柳田先生とひで様、けんぞう様をお見送りしつつ、涙がこぼれました。
どうぞお気をつけてお過ごし下さい。
胸いっぱいのお礼まで。
敬具
※NHKでは『けんちゃんのもみの木』の創作過程と意味を追ったドキュメンタリー番組を、2022年1月18日(火)と19日(水)の夜8:00~二夜連続で、NHK・Eテレ番組「ハートネットTV」で放送予定です。
森のおうち (学芸員 米山)